ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #23

なぜ「商品を売らない姿勢」が大切なのか。今夏、日本進出 b8taが明かすビジネスモデル

前回の記事:
「販売員で差別化」b8ta日本代表が語る、体験型RaaSで最も重要なポイント
 商品が売れなくてもビジネスが成立する店舗の先駆けである、米国・サンフランシスコ発のベンチャー企業「b8ta(ベータ)」が今夏、日本に出店します。店内には、スタートアップ企業がつくったハードウェア製品のほか、様々なイノベーティブな商品が並んでいます。そして、その販売売上ではなく、店内での顧客体験データの販売で収益を上げるビジネスモデルです。最終回となる第3回は、「売らない」ことを大事にする背景を聞きました。

第一回 有名テクノロジー企業も多数出品。米国発b8ta 北川卓司・日本代表に聞く日本進出の勝算
第二回 「販売員で差別化」b8ta日本代表が語る、体験型RaaSで最も重要なポイント
 

店で買うこともできるが、売ろうとはしない


郡司 2018年5月に米国b8taに初めて行き、そのときは同行メンバーが実際に商品を購入していました。店内に在庫を置いているんですよね。

北川 
はい。店舗や商品のサイズにもよりますが、基本的には置いています。
北川 卓司
b8ta Japan Country Manager
2004年PR会社入社後、IRコンサルティング会社、スタートアップのCEOを経て、フランスのEMLYON経営大学院でMBAを取得。 2015年ダイソン株式会社にリテールマネージャーとして入社し、世界初の旗艦店を表参道にオープン。東京統括部長を経て、2019年11月 より現職。

郡司 スタッフの評価基準に、商品を売ることが入っていないことが大きいと思います。

北川 
はい。そこが最も重要と思っていますが、逆に今まで販売員をしていた人だと受け入れづらい点だったりもします。
 
米国b8ta店内。

郡司 渋谷パルコに常設されているBOOSTER STUDIOも 、製品を体験してもらうだけで販売はしていません。パルコとCAMPFIREの共同運営なので、スタッフの評価に入れなくても、どうしても「売る姿勢」が出てしまうことを危惧して、売らないという決断をしたようです(参考:リニューアルした渋谷PARCOが、最も価値の高い1階に「商品を売らないお店」を出店した理由 )。

やはりプロダクトに触れると買いたくなることも多いため、個人的にはその場で買えるようにしてほしいと思うんですよね。パルコ社内でも販売するかどうかについては、賛否両論あったというのも理解できます。

北川 
そこは難しいポイントだと思っています。例えば、オープニングの勢いで思ったよりも売れれば、そちらにシフトしてしまいがちですよね。でも、一度売るようにすると、そのマインドを戻してもらうのが大変なんです。

郡司 
北川さんがダイソンの旗艦店を担当されていたときのインタビュー記事を拝見すると、「買ってもらうことが目的でなく、家電量販店などに送客できればベスト」と言っていました。しかし、社内的には「宣伝して、もっと売ろう」という人が出てくるように思います。
郡司 昇
店舗のICT活用研究所 代表
1999年ランド設立。セイジョー(現ココカラファイン)とFC契約。2007年セイジョー入社。調剤事業部課長→営業管理課長兼ココカラファインHD調剤担当で業務効率化・コスト削減・アライアンス等担当。2013年 ココカラファインOEC社長就任。2016年 ココカラファイン統合マーケティング部長兼任。 2018年4月~現職。ITベンダーの持つ最新技術をどのように小売業で価値を持たせていくかをベンダー、小売業双方の三方良しを実現する手助けを各社でしている。

北川 
たしかに当時は、私自身がマネージャーになったばかりで「売らない」という判断に対して、「お前、何を言ってんだ」という空気もありました、でも、サポートしてくれる人も多くいましたね。そのときの経験は、b8taでも生かされています。

郡司 
店内で商品をお客さんに試してもらうと、「ここは、もっとこうしたらいい」といったフィードバックが出てくると思うのですが、そうした声はどのように出品者に伝えられるのですか。

北川 
レポートのような形でお渡しします。そこは本社と関係なく、出品者と我々のやりとりになりますね

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