ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #39

小売業の商圏分析に向けた「データ取得方法」の実際:場に合わせる店、場を作る店④

前回の記事:
実態商圏を見る際は、「顧客のために」では失敗する:場に合わせる店、場を作る店③
  ここ数回にわたって、「場に合わせる店、場をつくる店」というテーマで小売業のあり方について書いています。前回は「場に合わせる店」において、どのように「場」、つまり商圏を分析するのかについて考えました。今回は、さらに深掘りして「場」を分析する手法について紹介します。
    

データの取得方法

   
 データの取得方法は主に3つあります。前回はひとつ目の手法として「会員情報」について考えました。今回紹介する2つ目の手法は、アンケートになります。
   
2. アンケート

 会員カードのない企業が利用する手法です。筆者は「ワークマンプラス」の2号店である中野島店を開店2日目に視察したところ、外部業者が買い物を終えた客にiPadを使ってインタビューしていましたので、それに答えて洗剤をもらって帰りました。もちろん「洗剤をもらう」ことが目的ではなく、インタビューの内容を知るためです。
   

    
 ヒアリングのポイントはいくつかありますが、新店舗として必要なのは郵便番号です。店舗立地と顧客の郵便番号分布で来店客の「実態商圏」が把握できるからです。

 ファーストリテイリング社でも、一時期は物理的な会員カードを使っていました。このカードの目的は商圏分析にあったので、立地ごとの商圏が把握できた段階で廃止となったと考えます。会員登録作業が顧客中心で店舗の手間がかからず、クラウドの普及で低価格化したデータ保管費用を加味して、ユニクロおよびGUアプリで会員制度を再開したものと推測します。

 なお、コスモス薬品(参考:九州の雄コスモス薬品は、首都圏ドラッグストアにも勝てるのか )も一時期、会員カードを導入しており、その目的も商圏分析にあったと考えています。

 さきほどの「ワークマンプラス」2号店のアンケートでは、商品に関する質問が多くありました。主に「靴のサイズが合っていたか」についての設問が多かった記憶があります。これは作業靴ではなく、980円のランニング用スニーカーを求める来店客のニーズとのミスマッチを探る質問だったと推測しています。筆者は足が大きいため(ニューバランス原宿店で3Dスキャニングしたところ右足29cm、左足29.5cm)、28cmまでしかないワークマンの品揃えに改善要望を出しました。ただ、ワークマンで大サイズが発売されないのは、低コストで生産できるロットの需要がないからだと理解しています。

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