ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #42
【展望】コンビニ、スーパー、ドラッグ、2022年の業績はどうなるのか?
2022/01/07
コンビニエンスストア業界の2022年は?
コンビニエンスストアの実績は2019年まで各分野順調な増加を示してきました。ところが、業界として年間1000~数1000店舗出店していた増加数が2017年度から鈍り、2018年度の5万6586店舗をピークに微減を始めています(2020年度末5万6176店舗)。これは2018年度をピークに、客数に比例しやすいサービスの売上が低下し始めたこととも連動します。
見方を変えると、商品開発をはじめ様々な工夫や販促を活用することで既存店売上高を伸ばしているともいえます。コロナ禍では都市部の店舗中心に売上が苦戦した結果、特に食品の売上で大きなダメージを受けたことが見てとれます。
本連載第37回で書いたように1次商圏業態のコンビニエンスストアは通勤の減少が固定化した場合、都市部の店舗が減少していくことになるでしょう。一方、地方の人口減少は継続しますので、2017年までの様に新規出店ラッシュということも起こりません。引き続き既存店実績に注目していくことになります。需要の変化に素早く対応した企業・店舗とそうではない企業・店舗に分かれていくでしょう。
ドラッグストア業界の2022年は?
ドラッグストアの実績は全体として右肩上がりですが、部門ごとにまったく違う動向を示しています。
現在、ドラッグストアの商品部門を経産省の区分で分けると、食品がトップになっています。驚かれた方が多いのではないでしょうか。ただ、ほとんど知られていませんが、ドラッグストア各社が発表する部門別売上高はそのまま横の比較ができないものです。
代表的なものを2つ挙げると、まずトイレタリーの扱いが各社で違うということです。一般にボディケア・スキンケア・ヘアケア・フェイスケア・シェービング・入浴剤といった「身だしなみや身体の手入れのために使用される商品群」をトイレタリーといいます。ところが、これらと同一の大手メーカーがつくる洗剤や生理用品および芳香剤などの嗜好目的商品をトイレタリーに入れることもあるのです。また、「身だしなみや身体の手入れのために使用される商品群」をビューティケアのくくりに入れる企業と日用雑貨品のくくりに入れる企業に二分されるので、IR情報をそのまま鵜呑みにして企業間の比較ができません。
次に、ヘルスケアというカテゴリーを設けた企業ではこの中に調剤・OTC医薬品・衛生用品・介護・ベビーなどが含まれます。これらがすべてヘルスケアのくくりなのか、一部だけなのかが各社で異なるのです。まとめると、経産省の区分と各企業IRの商品カテゴリーは一致しないということを留意する必要があります。
さて、本題の実績推移です。伸びが最も著しいのは食品です。コロナ禍以前から大幅な伸びを示してきました。この背景には地方の人口減少があります。人口減少の結果、地場の食品スーパーマーケットが既存店を維持できなくなることが年々増加しています。そこでロスの少ないヘルス&ビューティで利益を確保しつつ、手間(コスト)のかかる店内加工をしないが一般食品を低価格販売することで広い商圏を持つ郊外型ドラッグストアの勢いが年々増しているのです。
次に伸びが著しいのは調剤です。これはドラッグストアとして新規出店が難しくなった企業が(保険)調剤薬局を出店して業績を確保しようという動きと、超高齢社会対応の二面があります。
参考:本連載第29回 九州の雄コスモスは、首都圏ドラッグストアに勝てるのか
そして、コロナ禍で負の影響を最も大きく受けたのは化粧品のなかでもメイク関連です。マスクをするという生活変容とそれまで都市部でドル箱だったインバウンド売上が消滅したことが大きな要因になります。2022年後半にインバウンド需要が復活するかは不透明ですが、生活変容が完全に元に戻る可能性は低いと予測します。
以上、代表的な最寄品小売業であるスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアの売上から今年度の動きを予測しました。こちらを参考にしながら、2022年ぜひ成長の一手を打っていただけますと幸いです。
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