ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #59

小商圏でも利益を出せる北海道「DZマート」は、今後求められる小売業の姿かもしれない

前回の記事:
小商圏でも利益を出せる北海道「DZマート」は、今後求められる小売業の姿かもしれない
 

全国生産量1位の牛肉の消費量は46位


 前回紹介した北海道のディスカウントストア「DZマート」について、詳しく見ていきましょう。
  

 農林水産省「畜産統計」によると、北海道の肉用牛は55万3000頭であり、全国261万4000頭の21.2%を占める第1位です(令和4年)。

 また、総務省の家計調査によると、52の都道府県庁所在市及び政令指定都市における生鮮肉の年間消費量は一世帯あたり5万1170gで、そのうちの牛肉は12.2%です。札幌市では生鮮肉の消費量が5万1017gとほぼ全国平均ですが、牛肉消費量は46位の4508gです。生鮮肉のうち8.8%が牛肉であり、代わりに豚肉と鶏肉が消費を牽引しています。
   ※参考:総務省の資料(2021年~2023年平均の家計調査品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング)より郡司がグラフ作成

 札幌市、岩見沢市の大手スーパーマーケットの精肉コーナーはジンギスカン用の羊肉を除くと、関東と大きな差がない印象ですが、DZマートは大手スーパーマーケットとかなり違う品揃えでした。

 日持ちのする加工肉は比較的標準的な品揃えでしたが、ローコスト経営を支えるプロセスセンター経由で入荷した生鮮肉の品数は少なめに絞り込まれていて、他のスーパーよりも安く揃えていました。この中で最も特徴的なのが牛肉の少なさです。

 この理由は上述の地域特性にあると考えます。視察した時はどこまで意図的にしているのかはわからなかったのですが、このコラムを書くためにいろいろ調べていたところ、2022年11月にBSテレ東「グロースの翼」という番組でDZマートを経営するダイゼンを特集している動画を見つけました。
 

 この動画(5分32秒以降)を見ると、次の方針がわかります。
 
・北海道ではあまり牛肉を食べる習慣がないという前提で一番効率の良い品揃えをしている。
・(2人体制を基本とする)我々が提案する商品だけでは全ての品揃えはできないので、本格的なスーパーマーケットを上手に使い分けてほしい。
・提案する商品については、他社よりも圧倒的に価格が安く、いつも値段が変わらない(EDLP)。


 そして、来店客の声は「牛肉は(うちでは)そんなに頻繁に食べるものではない。(豚・鶏の)肉さえ揃っていれば特に不便さはない」とのことです。

 この方針通り、品揃えに不便さを感じない客が来店し、何かの機会に牛肉を選びたい時には他のスーパーマーケットを利用するわけです。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録