デジマ女子部 スキルアップしたい女子デジタルマーケター大集合! #02
オイシックス・ラ・大地、運用型広告からの顧客獲得が3年で3倍。鍵は“空・雨・傘”の思考法 【デジマ女子部】
2019/01/28
デジタルマーケティングに携わる女性マーケターの勉強と交流の場「デジマ女子部」。2カ月に1回、顧問を務めるマーケターの西井敏恭氏(シンクロ 代表取締役、オイシックス・ラ・大地 執行役員)が、ゲストと対談するセミナーを開いている。12月は「SNS広告運用におけるPDCAの回し方」と「マーケティングオートメーションの活用方法」の2本だてで開催された。
広告の役割は、継続的な顧客の育成にある
第1部は「SNS広告運用におけるPDCAの回し方」をテーマに、オイシックス・ラ・大地が運営する「Oisix」の広告運用を担当する齊藤菜穂子氏と、同社をサポートするアライドアーキテクツの鈴木優里氏が登壇した。Oisixは、安心安全な食材やミールキット「KitOisix(キットオイシックス)」のインターネット通販事業を展開している。齊藤氏が所属する新規顧客獲得セクションの特徴は、担当業務に「おためしセット」の初回購入だけでなく、その後の定期宅配サービスである「おいしっくすくらぶ」への入会までが含まれることだ。
西井氏は、「一般的に広告の目的は、新規で商品を一度購入してもらうことと捉えがちだが、Oisixでは継続的な個客に育成するところまでを役割として定義している」と話す。
そのため新規顧客獲得セクションは、定期宅配サービスに入会した人数をKPIとして掲げる。ただし、最初から広告で「定期宅配サービスに加入して毎週、商品を買ってください」とコミュニケーションしては、顧客は定期サービスに申し込むハードルが高くなり過ぎてしまう。そこで、まずは興味を持ってもらえる「おためしセット」のクリエイティブで広告を出稿している。
具体的な運用方法の説明に入る前に、SNS広告の大前提として理解しておくべきこととして、アライドアーキテクツの鈴木氏は「SNSは自分の好きなものをフォローしたり、友人とつながったりするプライベートな空間。その人にとって有益な情報でなければ、閲覧されないし、嫌がられる」と言及。西井氏も「SNS広告の、他メディアの広告との最大の違い。この特徴がクリエイティブを決める上でも大切になる」と補足した。
会員獲得数を、3倍にしたPDCAの回し方
広告運用のPDCAを回すにあたり、仮説検証が大切になる。「目標達成のための仮説を立てて実行してレビューし、そのレビューに対して次の打ち手を考えて実施する。これを繰り返して、打ち手の精度を上げている」と齊藤氏。その際のポイントは、3つあると紹介。ひとつは、仮説を立てるときにお客さまの声を直接聞くこと。インタビューを行い、購入の理由や使い方について細かく聞いて理解して、仮説構築に役立てる。
二つ目は、スピーディーに「レビュー」を行うこと。その日、何らかの数字が悪かったのであれば、その要因をすぐに探り、改善を行いPDCAのスピードを上げている。
そして三つ目は、“空・雨・傘”の思考方法を意識すること。これは「空が曇っている、雨が降るかもしれないから、傘を持っていこう」というように、ファクトを整理してそれに基づく仮説を立ててからアクションするということだ。西井氏は、「当社のカルチャーにもつながっている大事な考え方」と紹介した。
例えば、「赤字覚悟の1980円」という価格訴求のコピーを載せた段ボールのビジュアルをつくったクリエイティブでInstagramに広告出稿。その結果、目標よりもCTRは1%、会員への転換率は3%程度、低かったとする。
ここでファクトを整理する。ポイントとなるのは、お客さま目線で見たときに違和感がないか、なぜCTRが悪いのかといったように視点を一つずつ変えながら整理していくこと。そこから、例えばInstagramは、おしゃれな画像や素敵な空間を楽しむ場なのに、広告色が強すぎたのではないか、そもそもOisixを利用することの本質的な価値が伝わっていないと仮説を立てて、それならば広告色を減らし、既存のお客さまの声を掲載すれば、数値が上がるのではないかと施策を実行する。
その後、結果が出たらレビューをして、再度仮説を立てて実行を繰り返す。「施策改善には、絶対にレビューが必要」と齊藤氏。レビューで具体的な打ち手を出すために、あらかじめ細かく目標を設定しておくことも重要になる。
こうした取り組みによって、齊藤氏がOisixで広告運用を手掛けるようになってから3年で、広告からの会員獲得数は3倍になったと実績を紹介した。
※後編(1月29日公開予定)「マーケティングオートメーションの活用方法」に続く