日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #04

数々の広告賞を受賞した、高崎市「絶メシリスト」から見える“差別化を超えた地平”

前回の記事:
ポカリスエットが「ダンス選手権」で成功。ターゲットの好きなものに寄り添うことから始めよう
 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介し、その分析に努めていますが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、その上でその意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかを考えていこうと思います。実際、日本で話題になった事例の中には、海外のトレンドの延長線上にあるものが少なからず存在しています。今回は、その第4回です。
 

数々の広告賞を受賞した “差別化”を超えた施策


 今回、取り上げるのは、高崎市の地域活性化施策「絶メシリスト」。数々の広告賞を受賞し、現在ではテレビドラマ化までされている事例です。
 
絶やすな!絶品高崎グルメ 絶メシリスト

 「絶メシリスト」は、店主の高年齢化や後継ぎ問題などで、時代とともに次々となくなっている“絶やすには惜しい絶品グルメ=「絶メシ」”にフォーカスを当てた、群馬県高崎市のローカル特化型グルメ情報サイトです。

 オムライスにホワイトソースがかかっている「白い恋人」(からさき食堂)やラム肉に大量のすりおろしニンニクを絡めて炭火で網焼きにするだけの「バクダン」(山木屋)などが、レシピとともに紹介されています。

 さらに店主の高齢化に対応する“後継者求む”や、読者からの情報を募る“タレコミ求む”などのページも用意して、人気のサイトになりました。

 2018年ACC賞マーケティング・エフェクティブネス部門グランプリや2019年カンヌライオンズのメディア部門ブロンズも受賞し、その後さらに広がりを見せ、テレビドラマ化され2020年3月現在、毎週深夜に放映されています。
 
テレビCM総集編

 この事例で筆者が気になったのは、「絶メシリスト」にあるようなお店は、何も高崎市に限ったものではないということです。広告表現の基本中の基本と言われているのがUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)で、「他では言えない売り込みの効く主張」と訳されます。

 もっと簡単な言い方だと「差別化」となり、競合商品や競合サービスとは異なる点を取り上げようとするのが鉄則です。例えば、あちらのお茶がスッキリしているのならばこちらはマッタリ、商品Aが王道であれば、商品Bは挑戦者を打ち出すといった具合に。
 
PR動画

 ある学会イベントで、この施策を手がけた広告会社の人が話していたのですが、アイデアを採用するかどうかという時に、そのことは議論になったそうです。しかし市長は「他の自治体でも言えること、だからこそ我われが先陣を切って手掛けることに意味がある」といった趣旨の発言とともに、採用を決めたと言います。

 さらに市長は、「日本全国の地方都市が同じように困っている問題だから、絶メシがうまくいったら他の街でもやったらいい」とも述べ、実際にその後、石川県や柳川市にも絶メシリストの活動が拡がっています。

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