ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #34

「北欧、暮らしの道具店」が新規事業を社内ではなく、社外スタッフと始める深い理由

前回の記事:
「北欧、暮らしの道具店」の採用基準は、自分と世界に期待ができている人かどうか
 インテリア雑貨のオンライン販売にとどまらず、広告事業や映画など、事業領域を広げる「北欧、暮らしの道具店」の運営元であるクラシコム 代表取締役の青木耕平氏。ビジネス戦略に迫ったこれまでのインタビュー(第一回第二回第三回)に続いて、最終回ではチーム編成と、次世代にクラシコムをどうつなげていくのかという今後のビジョンについて聞いた。
 

自ら執行している方が「思考」できる


田岡 青木さんは毎日、思考する時間を大事にされている印象があります。どのように時間を使っていらっしゃいますか。

青木 私は、かなり業務の執行に時間を使っています。なので、一般的な経営者と比べると、社内に居ると思います。

田岡 意外です。

青木 6年ぐらい前は、執行する時間がすごく少ない時期もありました。当時は、コンテンツとサービスだけに集中していればよかったんです。ここには担当役員であり、妹である佐藤(クラシコム 取締役 「北欧、暮らしの道具店」店長 佐藤友子氏)がいますから、私は彼女の監督だけしていればよかったんです。

ところが、規模が大きくなるにつれてクリエイティブ、IT、マーケティング、コーポレート、広告など私が直轄しなければいけない領域が出てきて、執行者たらざるを得ない状況になったんです。
青木耕平氏
クラシコム 代表取締役

2006年、実妹である佐藤と株式会社クラシコム共同創業。2007年秋より北欧雑貨専門のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開業。「フィットする暮らし、つくろう。」というコンセプトのもと、北欧に限らず、世界各地、そして日本の、実用的でありつつ暮らしを彩るものを独自の視点でセレクトして販売している。現在は、EC事業のみならず、オリジナル商品の企画開発、WEBサイト上での日々の暮らしに関するコンテンツ配信や、企業とのタイアップ広告、リトルプレスの発行など多岐にわたるライフスタイル事業を展開中。

田岡 もっと思考の時間をとりたいということでしょうか。

青木 いえ、思考はじっとしてできるというものではないですよね。むしろ執行してからの方が思考できているように思います。ただ、新しいことを始めるための時間が減っているのは事実なので、ここは課題ですね。

田岡 会社としては、非連続なことに取り組むことも大事ですよね。

青木 そうなんです。だから、ここは意識して時間を取るようにしています。その取り方としては、新しいことは社員とはやらないことが多いです。基本的に最初は、社外のスタッフと始めるようにしています。

田岡 外部リソースを使うということですよね。それは、なぜですか。
田岡敬氏
エトヴォス 取締役 COO(最高執行責任者)

リクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。

青木 会社の規模が小さいので、不確実性の高い新規事業を社内リソースで成功させようと思うと、どうしても社内のエース級の人材を持ってくる必要が出てくるんです。でも、事業が失敗したとき、本人の気持ちや社内からの見え方を考えると、エースは元の部署に戻せないですよね。それはとてもリスクが高いことなので、うまくいくことがわかってからでないとエースを異動させたくないんです。

田岡 社長がやって失敗したら、謝れば済むだけですからね。

青木 そうなんです。それに外部スタッフであれば、プロジェクト単位で動いているわけで、終了すれば解散できます。

新規事業によってエースのキャリアを破壊してしまうことは、会社として許せません。もう少し大きな会社であれば、失敗させてあげられるので心苦しさはありますね。

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