私たちがP&Gマフィアと対峙する方法

①P&Gマフィアに学ぶ


 現時点で、一番手軽に選択できるのが、この選択肢でしょう。アジェンダノートでも、元マクドナルドCMOの足立さんの「足立光の無双塾」、元P&Gで吉野家の伊東さんの「伊東塾」など、P&Gマフィアの講師に学ぶ機会を提供されています。

 また、音部さんや森岡さんのように書籍を出されたり、独立してマーケティングのコンサルティングを提供されたりしている方も増えています。


②P&Gマフィアを採用する


 P&Gマフィアに限りませんが、マーケティングのプロが社内にいないのであれば、外部から入ってもらうというのも重要な選択肢だと思います。

 最近では、サンリオにCMOとして元西友の木村さんが入社されて話題になりましたし、スマートニュースの直近の躍進は西口さんがマーケティング担当執行役員として入社され、テレビCMに再挑戦したことが大きいと聞いています。


③“自社ならでは”の特徴を磨く


 そして、個人的に日本企業が特に注力すべきだと感じているのは、ここです。象徴的だったのが、今年のマーケティングアジェンダの「愛を叫べ、意味を創れ」のセッション。

 P&Gのファブリーズと、エステーの消臭力の事例を元に、会社の規模が全く違うP&Gに対して、エステーの消臭力がいかに戦ったのかという逸話が紹介されました。



 参考:後編「愛を叫べ、意味を創れ」元P&G伊東氏&音部氏、エステー鹿毛氏登壇(聞き手:ドミノ・ピザ ジャパン富永氏)

 これはエステーと、鹿毛さんが凄いという話ではありますが、会社の規模が違う日本企業でも、取り組み方によっては、P&Gと互角に戦えるという事例でもあります。

 エステーの施策は、奇策に見えるかもしれませんが、実はマーケティングの基本の上に、エステーらしさ、鹿毛さんらしさが積み上げられていることがポイントでしょう。

 伊東さんも、昨年の講演でP&Gに集まる人に共通する3つの要素として、「負けず嫌い」「天邪鬼(あまのじゃく)」「好奇心」を挙げて、特に同じデータを見ていても、それを大喜利(おおぎり)の視点で、いかに“ひねくれて”みるかが大事だと話していました。

 特に、日本企業に重要なことは、横ならびで競合他社と同じような商品をつくることではなく、自社の文化や歴史に沿った、自分たちならではのマーケティングを確立するところにあるように感じます。

 そういう意味では、個人的に印象的だったのは、エステーの鹿毛さんが自らのやり方の再現性をつくるために、自らグロービスで講師をし、そこで自社の宣伝チームを学ばせるという、教育の仕組みの構築にもトライされている点です。

 参考:番外編「愛を叫べ、意味を創れ」登壇者が語りきれなかった物語【聞き手:アジャイルメディア・ネットワーク徳力氏】

 日本では、まだ組織的にマーケティングを学ぶ仕組みがある会社は少ないように思いますが、今後はこういった取り組みがますます重要になると言えるでしょう。

 ちなみに、元々「○○マフィア」という呼び方は、「ペイパルマフィア」という、ペイパル出身のOBにピーターティール氏、イーロン・マスク氏、リード・ホフマン氏など、錚々たる起業家が揃っていたことから使われるようになったフレーズです。

 ただ、日本では「ペイパルマフィア」という言葉の知名度がそれほど高くないことから、「P&Gマフィア」のマフィアという単語が、一人歩きした印象を受けている人も少なくないようです。



 当然ながら、P&Gマフィアとして名前を挙げられる方々は、「元P&G出身者組織」として動いているわけでもありませんし、いまでもP&Gのために働き続けているわけでもありません。

 実は、あるP&Gマフィアによると、P&Gのようなグローバル企業で長く働いていると、自分が日本人であることを強く意識するシーンに多数遭遇し、最終的に日本への恩返しをしたいという思いが強くなる傾向にあるそうです。

 そういう意味で、多くのP&Gマフィアが、日本企業に転身されたり、日本企業にマーケティングを教える道を選んだりしてくれるのは、日本にとって幸運なことだと言えるかも知れません。
 
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