アジェンダノート編集部より、新年のご挨拶
2025年のマーケターは「50年先の未来」を見据えながら戦略を描こう【アジェンダノート編集部】
2025/01/01
止まらないAI進化、本質的な価値創造を
2024年はマーケティング領域において生成AIを中心とするテクノロジーの実装と、それによって生み出されるメリットや課題への試行錯誤が繰り広げられた年でした。「ネプラス・ユー京都2024 」で登壇したロボット研究の世界的権威 石黒浩氏は、アバター活用によってビジネス効果が飛躍的に高まった事例とともに、2025年の大阪万博では、生成AIをベースにロボットやアバターとの共生が広がった「50年先の未来」が展示されると語りました。
膨大なデータを瞬時に分析し、ペルソナの作成や市場の概算、コンテンツの自動生成、インサイトの抽出までも可能にする生成AI。パーソナライズされた価値を顧客に提供し、施策効果の可視化もできるアプリなどのデジタルツール。これらは現時点で当たり前となりつつあり、先駆者はまだ実現していない未来に向かって、何歩も先を進んでいるのです。
2025年のマーケターは目の前の施策効果やテクノロジーの動向を注視するだけでなく、「50年先の未来」をも見据えながら、より一層の業務効率の改善と本質的な価値創造へと邁進する必要があるのは間違いないでしょう。
SNS・UGC戦略が最重要施策のひとつに
加えて2024年はSNSが、これまでと違うレベルで影響力を発揮した年でもありました。情報の拡散やコミュニケーションだけでなく、情報収集からUGC(ユーザー生成コンテンツ)創出、人材や資金の調達に至るまで、SNSはビジネスに不可欠な存在として、既存メディアに匹敵する地位を確立したと言えるかもしれません。
とりわけUGCはブランドにとって最重要施策のひとつとなりました。Agenda noteで取材した花王の「ビオレUV」は、新マーケティング戦略に「SNS・UGC戦略」を組み込み、商品開発段階からUGCを思い描きます。資生堂ジャパンではマーケティング部にメディア戦略部が統合され、ターゲット別の最適なメディアミックスに取り組む体制を整えました。
低予算で爆発的なヒットやLTV向上を生み出す可能性があるUGCは、「話題化のレシピ」を通年テーマとして開催された「マーケティングアジェンダ2024 」でも、多彩な事例が共有されました。
トップマーケターとして知られる足立光氏(ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター CMO(兼)マーケティング本部長 CCRO(兼)デジタル本部長)は「炎上の一歩手前が話題化。そこに踏み込む勇気が大事」と会場のマーケターを鼓舞しました。リスクを避けるための情報が氾濫する現代、法規制や倫理的課題に真摯に向き合いながらも、敢えてリスクをとって挑戦できるかどうかが、企業の成長力の差を決定づけるのかもしれません。
感情が動く瞬間、商機が生まれる
現代はVUCAの時代です。2024年は元日に能登半島地震が起こり、米大統領選や兵庫県知事選では大手メディアの予測に反する結果が生まれました。AIは「ハルシネーション」と呼ばれるもっともらしい嘘を吐くことがあり、SNSには炎上リスクが伴います。50年先どころか明日の予測すら困難な時代に、マーケターが道標とすべきことはなんでしょうか。
そのヒントのひとつとなるのが「感情」だと考えます。
石黒氏のセッションでは「人間理解」が、テクノロジーとの共生における必須テーマとして語られました。人間の言動や感情の理解、つまり「顧客理解」はマーケティングのテーマとして探求されてきましたが、生成AIの浸透によって一層、必要性が高まっています。
広告・マーケティングの祭典「カンヌライオンズ 2024」。元電通のクリエーティブ・ディレクター 古川裕也氏の寄稿によると、生成AIとの対比で「クリエーティブの仕事にとって一番大切なものは何か」という問いを、参加者全員が潜在的に共有していたといいます。カンヌが用意した回答は「Humour」と「Humanity」。感情を揺るがす作品群が、ビジネスを動かす「説明不可能な何か」を表現しました。
現在はDAZN Japan CEOを務める笹本裕氏は「人々の感情がモーメントになる」と指摘しました。Twitter Japan の代表取締役時代、そこにマーケティングのメッセージを重ねることで感情移入と拡散をもたらせることがTwitter(現X)の提供価値と定義したと、Agenda noteの連載「マーケターズ・ロード」で振り返っています。
感情が揺れ動く瞬間に商機が生まれる。この普遍的な原理は、言語化の難しさや一過性といった課題をはらみながら、テクノロジーとSNS、マーケティング戦略の掛け合わせによって、より再現性の高いブランド価値向上を可能とするはずです。
本質的な情報とインスピレーションの提供
2025年3月に長崎で開催される「ダイレクトアジェンダ2025 」は、「Aha! moment ~顧客の心が動いた瞬間~」がテーマとなります。通販・直販に関わるトップマーケターからなるカウンシルメンバーの協議によって、新たなツールや指標を通じた感動体験の創出が、LTV向上に不可欠と判断されました。顧客の心の動きを捉え、あるいは揺り動かし、エンゲージメントの強化と持続可能なビジネスに繋げていく方策を議論します。
このように当社では2025年も、生成AIをはじめとする新たなテクノロジーの動向を踏まえつつ、マーケターにとっての本質的な価値を探究し続けます。カンファレンスや各種講座、2024年11月よりスタートした若手マーケターのアクセラレータープログラム「Rising Academy powered by ノバセル 」などの事業を通じて、有意義な知識とインスピレーションの提供、そして日本のマーケティング力の底上げに全力で取り組んで参ります。
このご挨拶を書くにあたり、最初に生成AIに書かせてみました。諸々のポイントを押さえた「それらしい」原稿ができましたが、Agenda noteとしての「意志」と「個性」が決定的に欠けており、没となりました。
ただこれも、ツールやプロンプトエンジニアリングを工夫すれば解決するかもしれません。自分で考え、書くことにこだわるには、明確な根拠が必要な時代になったと実感します。
編集部もテクノロジーの活用にチャレンジしながら、より一層、Agenda noteでしか読めない情報の収集とタイムリーな発信に努めて参ります。
2025年が皆さまにとって、素晴らしい1年となることを祈念しております。
【参考記事】
・アバターで売上7倍、マーケティングへの実装をロボット学の石黒浩氏が解説【ネプラス・ユー京都2024レポート後編】
・花王「ビオレUV」の新戦略、3Sサイクル(Scene・SNS・Store)の真価
・資生堂がマーケティング組織を改編、生活者とブランドが共創する時代の「最適なチームの在り方」
・ファミマ 足立光氏と日経BP 品田氏に学ぶ「話題化は炎上と紙一重だからこそ、一歩踏み込む勇気が大事」という視点【マーケティングアジェンダ2024レポート】
・【特別寄稿:古川裕也】今年。カンヌライオンズは、何を捨てて何を取り戻そうとしたのか。
・Twitter創業者ジャック・ドーシーから学んだパーパスの重要性【DAZN Japan笹本裕】