CES 2025 現地レポート #03

米国テクノロジー見本市「CES」でENEOSやクボタが存在感、ホンダのEV初公開も【電通 森 直樹】

前回の記事:
日本発プロダクトがCESイベントで注目の的に。キリン減塩スプーンやAGC次世代ガラスなど【電通 森 直樹】
 

CES本番開幕、注目の日本企業の展示は


 「CES 2025」速報の第3段は、1月7日に開幕したCES本番の展示会場から、日本企業による出展の様子をレポートします。

 CESではパナソニックやソニー、SAMSUNGやLGなど家電を中心とした老舗大手企業が多く出展するLVCC(Las Vegas Convention Center) Central Hallのほか、B2B企業が多く出展するNorth、昨年オープンした自動車などのモビリティ企業が主に展示するWest、そしてスマートホームやIoT、ヘルスケアウェルネス、フードテックといった新興技術・新興領域が集積する「Venetian EXPO」が主たる会場になります。それ以外にも、スタートアップが数千社展示する「Eureka Park」、アドテク・マケテク関連が出展する「C Space」など、非常に多くの会場が存在しており、会期中に全てをくまなく訪れるのは困難でしょう。

 今回は、パナソニックやソニーなど老舗出展企業ではなく、ここ数年で展示に力を入れている日本企業に焦点を当ててNorth、West、Venetian EXPOの3会場からお届けします。
 

ENEOSは展示拡大。カーボンニュートラル事業のパートナー開拓を目指す


 まずはNorthエリアに入ってすぐ目を引いたENEOSをご紹介します。ENEOSによるCES出展は3年目とのことで、カーボンニュートラルに向けた新エネルギーとして期待される水素の展示をしていました。風力や太陽光などの自然エネルギーで水素を製造し、MCHという技術によって、既存インフラを使った運搬・保存が可能になるといいます。さらに、二酸化炭素と水素を活用した合成燃料により、ガソリンなど既存の原油由来のエネルギーを代替する新エネルギーのほか、EVやハイブリット自動車向けのオイル、AI時代に欠かせないサーバーを冷却するオイル、AIベンチャーのPreferred Networksと協業して取り組む元素解析ソフトウェアなども展示されていました。これらは北米市場を中心にグローバルに展開するとのことでした。

 ENEOSホールディングス 広報部の大野氏によると、ENEOSの次の成長戦略のひとつがカーボンニュートラル領域。CES参入によって、この領域におけるグローバルでのビジネスパートナー開拓を目指すとのことです。さらにEV用オイルやサーバー冷却オイルなど、グローバルに展開する事業を後押しするためにも、CESでの発信がブランド露出にとって重要だと話してくれました。


カーボンニュートラル領域の要素技術や製品を多く紹介しています。筆者は昨年のENEOSの展示も訪れましたが、規模がかなり大きくなっていました。


取材に応じて頂いたENEOSホールディングス 広報部 コーポレートコミュニケーショングループ マネージャーの大野道子氏。
 

クボタも大規模展示・デモで手応え


 Westエリアで大規模に展開する自動車メーカーや、巨大コンバインを展示していた米農業機械大手John Deereに負けず、巨大なサイネージを設置して目立っていたのが農業機械・建設機械などを手掛ける日本のクボタでした。同社は全地形プラットフォーム車両「KATR」がCES Innovation Awards 2025のBest of Innovationを受賞しており、1時間ごとに行うデモンストレーションの効果もあってか、多くの人がブースに集まっていました。KATRのほか、データ・AI・自動化・電動化に対応するEVトラクターのコンセプトモデル「Agri Concept2.0」など、農業の未来を感じさせるプロダクトが魅力的に展示されていました。

 クボタ 秘書広報部広報課担当課長の船橋氏は、日本国内とグローバルチームで連携して展示に取り組んだそうです。そしてWest屋内で大規模に展示したことで既に多くの反響を得ていると、手応えを感じている様子でした。KATRのデモンストレーションは毎回100~150人規模の聴衆を集めており、グローバルプレゼンス向上に大きく貢献しているとのことでした。


サイネージを大胆に配置して、注目を集めるクボタの展示ブース。

 また、会場にいたクボタ 代表取締役社長の北尾裕一氏にもお話を伺うことができました。北尾社長は、CES 2025の最も大きなテーマであるAIについて「AIはディープラーニングで使えば使うほど賢くなっていく。お客さまとメーカーが一緒に製品を使う中で進化させていくことが重要。そして、さまざまなスタートアップと提携しながら、カメラによる監視やAIを使ったソリューションを開発している」と語りました。さらにNVIDIAやその他のパートナーとの協業を通じて、製造現場へのロボット導入なども視野に入れているとのことでした。


取材陣に笑顔を見せるクボタ 代表取締役社長 北尾裕一氏。
 

多彩な業態の日本企業出展が目立つ


 今年はB2B、B2Cを問わず、多彩な業種業態の日本企業が目立って出展していたのが嬉しく感じました。ここからは写真中心でご紹介しましょう。


Unveiledで見かけた化粧品のコーセーと東京エレクトロンデバイスによるMR技術を活用したビューティーシミュレーションサービスの展示。





ガラスメーカーのAGCはInnovation Awardを受賞したAR/MRグラス向けガラス基板「M100/200 シリーズ」を中心に、多くの素材展示とソリューションを紹介していました。
 
電機メーカーのパイオニアはSDV(Software Defined Vehicle)時代のサウンド統合プラットフォームや二輪車のコネクテッドソリューションなどを公開しています。

 
Unveiledで最も盛り上がっていたキリンホールディングスの「エレキソルト」はVenetianのフードテックコーナーにも出展していました。出展は急遽決まったそうで、大掛かりではないものの、Unveiledの余波や注目度の高さもあって、多くの来場があるとのことでした。

 

 
ホンダは2026年からグローバル市場への投入を予定しているEV「Honda 0(ゼロ)シリーズ」のプロトタイプ2車種を世界初公開し、多くの来場者が押し寄せていました。

 
スズキの展示は「Impact of the Small」がテーマ。「小・少・軽・短・美」の追求を通じた社会課題の解決に共感する仲間づくりを目的に出展したとのことでした。スズキが取り組む「電動モビリティベースユニット」や、テーマを体現する軽トラック(写真)が展示され、注目を集めていました。

 今回の速報はここまで。家電やIT企業のみならず、多くの業種にとってCESがグローバル発信の場として活用され始めていることが実感できるCES 2025となっています。
 
森 直樹 氏
電通 ビジネストランスフォーメーション・クリエーティブセンター エクスペリエンス・デザイン部長/クリエーティブディレクター

 光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。2023年まで公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構の幹事(モバイル委員長)を務める。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。CESでは、ライフワークとして各種メディアに10年以上の寄稿経験がある。

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