ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #41

急増する体験型店舗。b8taの挑戦から見えてくる必ず押さえるべきポイント

前回の記事:
未来を創る“見世”:場に合わせる店、場をつくる店⑤
 本連載で繰り返し取り上げている店舗として、最新のIT機器などが体験できるシリコンバレー発の小売企業のb8taがあります。日本でも有楽町、新宿、渋谷に店舗を持っています。
              
 これらの記事を読むような小売業のDXに関心がある人にとって、b8taはもはや2年半前のように「知る人ぞ知る」という店舗ではなくなったと認識しています。

       

b8ta Tokyo(新宿マルイ)
b8ta Tokyo(新宿マルイ)
        

体験型店舗の急増と現実


 この1年で百貨店・ショッピングセンターといった商業施設中心に、体験価値に加えて売る以外のマネタイズ手段を持つ「RaaS(Retail as a Service:サービスとしての小売)」が急増しています。筆者は、商業施設においてCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大前からテナントの入居率低下という課題が認識されていたことが背景にあると考えています。

 また、D2Cの注目度が増したことにより、百貨店の催事場などでの商品展示も増えました。これはRaaSというわけではなく、従来の展示即売会の延長線上にあるものです。そういった店舗やポップアップのいくつかを再訪問も含めて訪れてみました。

 ただ、それらの店舗では、商品を陳列してタブレットを設置し、そこかしこにQRコードが掲載されて「SNSでシェアしてください!」というメッセージがあるだけです。スタッフはレジだけにいて、商品のことを聞いても答えられないという店が半分以上でした。

 また、内装をInstagramにアップしてもらうような工夫をしていることが多いです。たしかに、たまたま訪問した若い女性たちが写真を撮ってSNSにアップしている光景を見かけました。ある意味においては、狙い通りとも言えるでしょう。しかしながら、そもそもの狙いが「的外れではないか?」と感じるのです。

 体験型店舗の本来の目的は「理想的な形で商品を体験してもらうこと」であると筆者は考えます。そして、そのためには、何が必要でしょうか? 個々の商品とは無関係な“インスタ映え”スポットは何に御利益(ごりやく)があるのでしょうか。もちろん「場」の認知を拡大するという効果はあるでしょう。しかし、そこまでです。商品をご紹介する場所においては、商品そのものに注目していただくことがより重要です。

 そのことを理解していない店舗は結局、「D2Cやスタートアップの商品を並べるだけで、数カ月で飽きられて失敗する可能性が高い」と考えます。具体的な施設・店舗名の記載は差し控えますが、「新業態」「新しい取り組み」だからという頑張りが空回りしていると感じました。

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