【読書の秋】トップマーケターの価値観を変えた一冊 #01
【読書の秋】ファミリーマート 足立光氏、はなまる 髙口裕之氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」①
2023/09/07
- 書評,
「読書の秋」は、マーケターとして成長する絶好の機会です。何を読むかを選ぶときに、トップマーケターのオススメ書籍を参考にすることで、新しい視点とアイデアに触れることができます。今回のテーマは「トップマーケターの価値観を変えた一冊」です。マーケター、ビジネスパーソンとして、自分に新たな価値観や視点を与えてくれた書籍を1冊紹介してもらいました。この秋、ビジネスの成功につなげる選書をしましょう。
【読書の秋】トップマーケターの価値観を変えた一冊
- 第1回 ファミリーマート 足立光氏、はなまる 髙口裕之氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」①
- 第2回 元ユニ・チャーム 木村幸広氏、UCC上島珈琲 里見陵氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」②
- 第3回 店舗のICT活用研究所 郡司昇氏、ピップ 久保田達之助氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」③
- 第4回 花王 廣澤祐氏、FinT 大槻祐依氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」④
- 第5回 シェラトン都ホテル東京 能川一太氏、吉野家 田中安人氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」⑤
- 第6回 Facebook Japan中村淳一氏、ニューバランスジャパン鈴木健氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」⑥
- 第7回 LINE 菅野勇太氏、花王 鈴木愛子氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」⑦
- 第8回 クー・マーケティング・カンパニー 音部大輔氏、ユナイテッドアローズ 藤原義昭氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」⑧
- 第9回 シンクロ 西井敏恭氏、青山商事 藤原尚也氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」⑨
- 第10回 ベストインクラスプロデューサーズ 菅恭一氏、一般社団法人渋谷未来デザイン 長田新子氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」⑩
ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター / CMO 足立光氏
自分の価値観を変えた一冊:PLUTO (1) 浦沢直樹(著)、小学館
浦沢直樹氏の作品群の中で、私が最高傑作のひとつだと思う『PLUTO』は、手塚治虫氏の『鉄腕アトム』(手塚プロダクション)シリーズの名作のひとつを原作に、著者が解釈しなおしたものです。最初に読んだときは「まったく同じモチーフで、こんなにも違う漫画になるのか!」という、純粋な驚きと感動がありました。
原作と同じ設定なのに完全に「浦沢直樹」化した登場人物のキャラクター。ロボット同士の戦いを楽しんだ原作とはまったく違い、戦闘シーンが少なく、ロボットたちの感情や内面を追い続ける浦沢版。原作はアトムが主役なのに、何と浦沢版では(ロボット刑事の)ゲジヒトがほぼ主役で、アトムは最後のほうまでほとんど出て来てきません。これはマーケティングと同じで、同じ商品やストーリーでも、見せ方によってこんなにも変わる、という好例だと思います。
私が特に好きなのは、ほぼ主役であったゲジヒトがいなくなったあとの第7巻です。あまりにも美しく優しいエプシロンが主役になって、何の違和感もなく、心にしみるストーリーが展開されています。また原作の「エプシロンの手」のストーリーまで、見事に残したままなのです。
もちろん、原作を知らなくても楽しく読めますが、原作と読み比べると、さらに楽しめること間違いありません。全8巻、一気読みできます。今年10月からNetflixでアニメが配信開始される直前の今、ぜひ多くの人に読んで欲しいと思います。
はなまる チーフマーケティングオフィサー(CMO) 髙口裕之氏
自分の価値観を変えた一冊:道をひらく 松下幸之助(著)、PHP研究所
私が生まれる1年前に刊行されている55年前の書籍ですから、多くの人が読んでいるのではないでしょうか?
私が初めて手に取ったのは、新卒で入った最初の会社を辞め、まさに新たな道へ進もうとしていた2011年でした。キャリアだけでなく、この先の人生を歩いて行くにあたって、人生観から日々の姿勢まで、それこそ360度すべての方向に不安を感じていました。
転職という意思決定はしていたものの、どこか落ち着かない時間だったので、各方面の不安それぞれについての書籍を読む余裕はなかった中、この書籍はそれらの方面を網羅しつつ簡潔に書かれており、そのときの私に過不足なくスッと入って心を整えることができました。
さらにその数年後、もう一度お世話になることになりました。私が最初にプライベート・エクイティ・ファンド体制を経験しているとき、業績回復により社長としてバイアウトできたにも関わらず、譲渡先との経営方針が合わず、悩んだ末に自ら退任する選択をしました。そのときの忸怩たる思いをなかなか消化できず、苦しい時間が続きましたが、この書籍に再び救われました。そのときに印をつけたページである「風が吹けば」「時を待つ心」「一陽来復」は今でも時折読み返しています。