【読書の秋】トップマーケターの価値観を変えた一冊 #06

【読書の秋】Facebook Japan中村淳一氏、ニューバランスジャパン鈴木健氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」⑥

前回の記事:
【読書の秋】シェラトン都ホテル東京 能川一太氏、吉野家 田中安人氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」⑤
 「読書の秋」は、マーケターとして成長する絶好の機会です。何を読むかを選ぶときに、トップマーケターのオススメ書籍を参考にすることで、新しい視点とアイデアに触れることができます。今回のテーマは「トップマーケターの価値観を変えた一冊」です。マーケター、ビジネスパーソンとして、自分に新たな価値観や視点を与えてくれた書籍を1冊紹介してもらいました。この秋、ビジネスの成功につなげる選書をしましょう。
 
【読書の秋】トップマーケターの価値観を変えた一冊
 

Facebook Japan マーケティングサイエンス統括 執行役員 中村淳一氏


自分の価値観を変えた一冊:心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす ジェラルド・ザルトマン (著)、ダイヤモンド社
 

 マーケターがインサイトのスキルを手に入れるための必携書です。著者はハーバードビジネススクールのザルトマン名誉教授になります。顧客の95%が無意識の中で決断しているという現実ですが、多くのマーケターは顧客が合理的に動いていると信じ込んでいます。

 また、多くのマーケターは顧客理解を定性調査やアンケートの言葉のみで捉える誤解を持っていますが、実際には言葉だけでは深いインサイトを得るのは難しいです。本書でザルトマン教授は、メタファーなどを活用して顧客の無意識を明らかにする方法を示しています。

 私が前職のP&Gで新入社員に絶対に読むよう推奨した1冊で、ときに基本を思い出し、確認するために読み返しています。この機会にぜひ読んでみてください。
 

ニューバランスジャパン DTC&マーケティングディレクター 鈴木 健氏


自分の価値観を変えた一冊:良い戦略、悪い戦略 リチャード・P・ルメルト (著)、日本経済新聞出版
 

 マーケターは日々「戦略」という言葉に接し、そして普段の業務でも使っていると思います。ただ、どうも「戦略」という言葉が大言壮語のように思われている気がします。「戦略」は、トップマネジメントや要職が作成するものであり、部下が行う日々の活動は「戦術」と呼ばれ、明確に区別されています。このような区別は、「戦略があっても実行できない」のように、「戦略」vs「実行」のような問題としても表現されます。

 言い換えると、戦略がいつも「理想的な何か」であり、それがあれば解決するはずなのに、現場が必死で取り組んでいることと戦略がつながっていないため、「ただの戦術」に過ぎない状況になっていると捉えられています。したがって経営者は「戦略」という言葉が好きで、それを振り回しながら現場を鼓舞しているつもりですが、実際の現場は、そのような言葉によって無意味な活動が増えることを常に警戒していると思います。

 そのような問いに対して、著者のルメルトはそもそも「戦略」と「戦術」、「戦略」と「実行」のような区別は、実際のところ経営者の理想や目標を無理やり現実に押し付けているだけだと丁寧に語っています(そのようなエピソードが本書にも出てきます)。

 彼によれば、現場が行っている戦術は現場レベルの「戦略」であり、それには必ず実行が伴っていなければ、そもそも「戦略」として無意味です。各層にはそれぞれの「戦略」があり、いうなれば戦略がただの理念ではなく、具体的な実行を意味します。彼のアプローチは、戦略におけるパターンづくりのような戦争の兵法書ではなく、徹底的に現実の状況に即したエンジニアリングです。そのような意味で私がいままで考えていた「戦略」の概念を覆してくれた良書です。

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