【読書の秋】トップマーケターの価値観を変えた一冊 #02

【読書の秋】元ユニ・チャーム 木村幸広氏、UCC上島珈琲 里見陵氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」②

前回の記事:
【読書の秋】ファミリーマート 足立光氏、はなまる 髙口裕之氏の「トップマーケターの価値観を変えた一冊」①
 「読書の秋」は、マーケターとして成長する絶好の機会です。何を読むかを選ぶときに、トップマーケターのオススメ書籍を参考にすることで、新しい視点とアイデアに触れることができます。今回のテーマは「トップマーケターの価値観を変えた一冊」です。マーケター、ビジネスパーソンとして、自分に新たな価値観や視点を与えてくれた書籍を1冊紹介してもらいました。この秋、ビジネスの成功につなげる選書をしましょう。
 
【読書の秋】トップマーケターの価値観を変えた一冊
 

木村グローバルマーケティング 代表 / アルダCMO 木村幸広氏


自分の価値観を変えた一冊:なぜ戦略の落とし穴にはまるのか 伊丹敬之(著)、日経BP
 

 私がインドから帰国して、ユニ・チャームのグローバルマーケティング本部長として全体の戦略に責任を持つようになった頃、成熟国を中心に戦略の効き具合が以前より悪くなりました。メンバーが必死で考えた戦略を現場も必死で実行しているのに成果につながらないことが多くなったのです。戦略の何が悪いのか、それを悩んでいたときに、この書籍に出会いました。

 一橋大学名誉教授の伊丹敬之氏は本書を書かれる前に、日経新聞のコラム『戦略とは何か?』の中で以下の「戦略の3つの落とし穴」を提言しています。

 ① 目標を掲げただけなのにそれで「戦略を作った」と錯覚する。
 ② 「変化のシナリオ」がないのに、それで「戦略を作った」と勘違いする。
 ③ 戦略作成を現場や最前線に任せきりにする。

 いずれも腑に落ちる注意点ばかりで、これらを元に我々の戦略が落とし穴に陥っていないか、いつも意識していました。ただ、それでも戦略の効果は低下傾向にあり、その理由に悩んでいた時期でした。

 本書では、1部で「思考プロセスの落とし穴」。2部で「戦略内容の落とし穴」に分類され、全部で8つの「深い落とし穴」を提起しています。その中で、いくつか重要な箇所を紹介します。

1. ビジョンを描かず、現実ばかりを見る

 現状分析によって、現実の課題に直面し「そもそもどうなりたいのか」が薄れてしまい、現実逃避のアイデアに陥ってしまう危険性を指摘しています。我々にとって環境分析は大切ですが、そもそも自分たちがどうなりたかったのか、ビジョンの実現に何が課題かという思考で分析を進めることが重要です。それによってビジョンに基づき、よりその組織の強みを活かした戦略が構築でき、かつ全体実行力も上がります。

2. 正ばかりで、奇も勢いもない

 過去からやってきた戦略の踏襲が、勝率の向上に繋がりにくくなっている環境の中で、先例に基づいて「正しいと思うこと」と「勝てること」の境界線を越えることが「奇」であり「勢い」である。これを「正」に加えるというスパイスがないと、勝率は上がらない。

 以上2点を紹介しました。戦略論を突き詰めてこられた伊丹教授が「ビジョン」の大切さ、「奇」「勢い」の効果性を説いていることに感銘を受けて、大いに参考にさせてもらいました。そして、結果としてユニ・チャームの業績を全員の力で伸ばすことができました。
 

UCC上島珈琲 取締役副社長 里見陵氏


自分の価値観を変えた一冊:経営は「実行」 ラリー・ボシディ(著)、ラム・チャラン(著)、日経BPマーケティング
 

「トップマーケターの価値観を変えた一冊」というお題をもらい、「え、トップマーケターではまったくないけど…」と思いながらも自宅の本棚を漁りました。私は経営者本人が書き下ろした生々しい事例が豊富にある書籍が大好きで、ジャック・ウェルチ氏の『わが経営』(日経BPマーケティング)、サム・ウェルトン氏の『私のウォルマート商法』(講談社)、稲盛和夫氏の『生き方』(サンマーク出版)、川村隆氏の『ザ・ラストマン』(KADOKAWA/角川書店)、平井一夫氏の『ソニー再生』(日本経済新聞出版)など、いろいろとおすすめはあるのですが、一番はラリー・ボシディ氏とラム・チャラン氏の『経営は実行』(日経BPマーケティング)です。本書は、元ゼネラル・エレクトリック 会長 兼 CEOのジャック・ウエルチ氏が惚れ込んだ元ハネウェル 会長 兼 CEOのラリー・ボシディ氏と、経営コンサルタントのラム・チャラン氏の共著で、理論と実践の両目線で書かれています。

 マーケティングにしても、経営戦略にしても、適切な実行が伴わないと機能しません。その一番厄介な「実行」について体系的かつ具体的に取り上げられた本書は、相当稀有で価値のある一冊だと思います。経営者目線が強い書籍ですが、何度読んでも示唆があり手放せません。経営者を目指している、戦略を確実に実行して成果に繋げたい、といった思いが強い人にオススメです。

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